ふあぁ…とと様ぁ…きゃっ！まだまだ青かったな…こりゃァ…はぁ…負けたァ… 精進して出直すさ…

江戸っ子は皐月の恋の吹き流し。天に登りし珀龍の、澪引きをば承る！下野、東海道、東都、相州、和州、美濃、木曽街道、木曽路！諸国滝巡り！

江戸っ子は皐月の恋の吹き流し。さて！お目に止まれば元へと返す！きりふり、くわんおん、葵、ろうべん、義経、養老、小野、阿弥陀！諸国滝巡り！

せいっ！はァ！べェらぼうめィ！ありゃりゃこらら、っと！

ま、炊事に掃除家事諸々はご勘弁な。

恐悦至極、おそれ入谷の鬼子母神サ！にわか仕立ての俺の剣も、満更でもねェだろ？今後ともご贔屓に願うよ、マスター。ん？まーた、とと様が何か愚痴ってる。…てめえの剣は大道芸だって？やかしいや！武芸も芸だよ！この調子で武芸百般有竹ご竹総ナメにしてやるサ、アッハハハハ！

おっと、悪いねェ。生憎お着替えはなしだ。こいつは俺の一張羅さ。どうだいマスター？今の俺、お江戸の仙女かお侍、どっちに見える？

あんただけは、古朴の小娘が馬鹿やってたって、忘れないでいてくれたら…

はぁ…なんかおっかしいな…剣を振るっても勝手が狂うってか… い、いや、大丈夫だって！熱とかねえって！…ちょ、ちょっと離れておくんな、マスター！…ああっ、ち、違えからな！？部屋にはそのままいてくれて、いいから、さ…

剣の修業もそうなんだがね、俺の夢は仙女になることだ！水滸伝やら西遊記やら唐繰の伝記に顔を出すような男にも負けねえ、知恵物で滅法強い、花のごとく艶やかに千変万化の仙術を使うそんな仙女になぁ…！んん？もう粗方願いがかなってねえか！？なあ、マスター！ふふっ！……なにィ、とと様？ひとっつも成し遂げちゃいねェって？チェッ！知ってたサ。

ふぅん！俺の大好物といやァ、読本だ！今風には『らのべ』っつーのかい？ほう！マスターも興味あるたぁ嬉しいねェ！それをだ…とと様が馬琴の旦那と大喧嘩なんざするもんだから、読本の仕事がめっきり減っちまって…恨めしいやら懐寂しいやら…ギャッ！

あぁ…俺はガサツで不束者だからな。人様のお世話やら介抱やらが、空っ下手でな。剣やら絵筆やらで気ままに遊んでいるのが性に合うのサ。

天魔の姫様、鈴鹿の御前か…！〜〜ッ！同じセイバーで、見た感じ年の頃も近ぇみてえだ！どうにかお近づきになって、神通力にあやかりてェ！…ただなぁ、あれが、あの、『じぇいけぇ』ってのは馴染まねえ… 見習って俺も真似してみるべきか… よ、よお姫様！ま、まじやばの『たぴおかすいいつ』が、『てんあげいんすたばえ』で、『やばみわんちゃんまじまんじ』だって、やってらんないじゃん！？

拙えおれの腕前で、お役に立てれば重畳サ。猫のノミ取り耳掃除、なんでもござれだァ。信州信濃の新蕎麦よりも、俺はマスターの側がいい、ってね。

そいつァてめぇが墨で潰した黒歴史…？アッハッハ、なんだいソリャ。稼ぎどきだな、マスター！

ホレ、とと様の錦絵に『忠臣蔵の討入り』があってナ。